海の豊かさを守る可能性『未利用魚』って知ってる?
-『顔のヘンな魚ほどうまいものだよ』-
(出典 開高健)
こんにちは。
僕たちが今当たり前に口にしている「海産物」。
昨今では地球温暖化や異常気象による影響で漁獲量が減っている状況が目立ってきています。
このままいけば、食卓に「魚」が並ばなくなる日も遠くないのでは?
と、言われていいるのですが、そんな中でも一筋の希望の光が見えてきました。
「未利用魚」
という言葉を皆さんはご存知ですか?
未利用魚とは、様々な理由によって
「売れなかったり」「市場に出回らない」魚のことを指す言葉です。
実は今、様々な要因で漁獲量が減少している日本において、この「未利用魚」が解決策の一手になるのではないか?と密かに注目が集まっているのです。
そこで今回は、この「未利用魚」について皆様に知っていただこうと
・未利用魚とはどんなものか?
・なぜ注目されているのか?
・どんな魚が当たるのか?
など。詳しく記事にしていこうと思うので、
最後までお付き合いいただけたら幸いです。
目次
未利用魚
「未利用魚」とは一体どういった魚なのでしょうか?
実は、正しい定義は定まっていません。
サイズが大きすぎたり、小さすぎたりする魚や
毒や骨の多さで調理しずらかったりする魚など
商品価値が低い「底利用魚」などが含まれます。
こうした魚は市場に出回っても、買い手がつかず、低価格で取引される事がほとんどで、
売り手である漁業者や水産業者が孫になってしまう為、廃棄されるなどして
「未利用魚」は自然と市場に出回らなくなっているのです。
では、「未利用魚」にはどんな特徴があるのでしょうか?
ここではその特徴を紹介していきます。
サイズが規格外
魚のサイズが大きすぎたり、小さすぎたりすると市場に出ても買い手がつかず、結局廃棄してしまうことが多いことから、「未利用魚」となることが多いです。
商業的な見地から「未利用魚」となるケースに分類されます。
漁獲量が十分でないもの、漁獲量が多すぎるもの
流通している魚であっても、漁獲量の増減により「高値」がつかなかったり、
買い手がつかないものは破棄してしまうことから「未利用魚」になりやすいです。
こちらも商業的見地からのもの。
一般に知られていない魚など
一般的な知名度がない魚も「未利用魚になりやすい」です。
市場に出回っても、消費者が買うに至らないことが多いため、市場に出回る前に
廃棄か消費されることが多いです。認知的な見地からのもののケースです。
調理が面倒なもの
骨があったり、毒があったりすると、消費者から敬遠されやすくなる為、
取り扱う水産業者は少なくなります。味が抜群に良いなどの理由がない限りは
市場に出回ることは少ないでしょう。商業的と安全的見地からのケース。
特定の地域でしか食べられないもの
特定の地域で食べられているものも、
そのほかの地域では「価値」がグンと下がることがあります。
その為「未利用魚」になるケースは少なくありません。
認知的ケースに当てはまります。
では、なぜそんな長年「訳あり商品」として扱われてきた、
「未利用魚」が近年注目を集めているのでしょうか?
その背景には様々な要因で「不漁」になり始めている日本漁業と深く関わりがあるのです。
日本漁業の漁獲量を補填できる「救世主」
日本における魚の漁獲量は1990年に記録された957万トンと最後に減少を続け、
現在の2022年にはおよそ319万トンまでに落ち込んでしまっています。
その原因としては「気候変動」や「異常気象」をはじめ、魚の乱獲や混獲をはじめとする
「魚の獲りすぎ問題」があります。
現在各国、様々な対策を取り、長期的で持続可能な取り組みにより、少しずつ回復に向かってはいるものの今ずぐ劇的な効果は現れずらいもの。
そこで、注目されたのが「未利用魚」です。
未利用魚は世界の統計によると約30〜35%が廃棄されているというデータがあります。
これは日本で言うと約100万トンの魚が廃棄されていると言うことになります。
もしこれまで捨てられていた未利用魚を消費できたら、「食品ロス」や漁業の経済効果アップが見込めます。
このことから未利用魚は、「日本漁業」や「日本経済」の活性化にもつながるのではないかと注目されているのです。
では、一体どんな種類の魚が未利用魚として扱われているのでしょうか?
ここではその魚種と理由を紹介していきます。
アイゴ
アイゴは当社で最もよく扱う未利用魚のひとつです。未利用魚の代表格とも言えます。
通称「バリ」とも言い、尾びれと背びれの部分に毒針がついているのが特徴です。
全国的にも迷惑がられる魚なのですが、味は本当においしく、たとえるなら「旨味が強い鯛」です。通の人に好まれる魚です。
【理由】
・毒針があってさばきづらい
・磯を食べるので内蔵が臭い
イラ
イラも代表的な未利用魚です。漢字では「伊良」と書き、福岡では「鳩ぽっぽ(はとぽっぽ)」とか呼ばれます。底曳網漁で獲れる魚で、狙って獲れるような魚でもないので、なかなか市場に出回りません。味は上品な白身魚で、まったく癖がありません。
【理由】
・見た目が悪いので獲られない
・鱗が大きく加工しづらい
ボラ
ボラは大量発生のニュースがよく流れたり、あとは川釣りなどで釣れることからあまり良いイメージはないかもしれません。味は脂も乗っていますし食感も抜群です。
【理由】
・臭いイメージがある
ニザダイ
ニザダイは、顔はウマヅラハギにそっくり。全体的にグレーの色をした魚です。
脂っこい白身の魚で大変美味しいのですが、磯焼け(海藻類がなくなる現象のこと)の原因となる魚で、海藻類を食い荒らします。海藻類を食べることもあってか、水揚げされる場所によって味がぜんぜん違います。
【理由】
・磯を食べるので内蔵が臭い
・皮が硬く加工しづらい
・足が早い
最近では「未利用魚」が注目を集めるだけではなく、
実際に数多くの取り組みが行われるようになってきました。
ここではその1部をご紹介します。
未利用魚を限定のお弁当に
鹿児島の霧島市「日当山無垢食堂」では未利用魚をお弁当として販売する取り組みが行われています。魚フライやさつま揚げが入った「大隅のごちそう無垢弁当」は、ギンカガミやコバンザメなど滅多に食べられないものばかり。これを機会に、コバンザメなどの美味しさを知ってほしいとのこと。
未利用魚が届くオンラインサービス
最近では漁師から直接、未利用魚が届くオンライン直販サービスがあります。
こちらのサイトは漁師が直販している為、美味しい食べ方や調理法なども教えてもらうことができます。
未利用魚を使って地域活性化
福岡県宗像市にある道の駅では、「未利用魚」を含め、獲ったものの市場では価値がつかない魚を積極的に漁師から受け入れています。漁師に売り場を貸し出し、漁師自身が売りたい魚を売りたい値段で販売できる仕組みにすることで、普段は捨ててしまう「未利用魚」などの魚の販売を可能にしました。漁業者の収入アップにつながっています。
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